パイプカットとは
- 精子の通り道である「精管」を左右とも切断し、結紮(しばる)・焼灼などで閉じる手術です。
- 精子が精液に混ざらなくなり、避妊を目的とした方法として行います。
- 永続的な避妊を目的とした手術で、原則として元に戻すことは想定しません。
- 勃起・射精・オルガズム・射精量・男性ホルモン・体毛や声などは基本的に変わりません。
- 精子は精液のごく一部のため、見た目の変化はほとんどありません。つくられなくなった精子は体内で吸収されます。
手術前 / 手術後
手術前:精子が通る
手術後:通り道を遮断。精子は精液に混ざらず体内で吸収されます。
避妊効果について
- 避妊効果は非常に高い方法ですが、100%ではありません。
- ごくまれに、切断した精管が自然につながる「再開通」が起こり、避妊に失敗することがあります(手術後まもない時期・数年後のいずれも報告があります)。
- 手術直後は、遮断した場所より尿道側に精子が残っているため、しばらくは避妊効果がありません。
- 精液検査で精子がいないことを確認するまでは、ほかの避妊法を続けていただく必要があります(詳しくは後半で説明します)。
重要:手術を受けた直後は避妊できません。確認検査が済むまで避妊を継続してください。
男性生殖器のしくみ(模式図)
精巣:精子をつくる
精巣上体:精子をためて成熟させる
精管:精子を運ぶ管
→ パイプカットで処理するのはこの精管です
前立腺・精嚢:精液の成分をつくる
尿道・陰茎:精液と尿の通り道
赤い × 印 = 精管を切断・結紮する場所
手術を受ける前に(ご確認いただきたいこと)
- 将来お子さまを望む可能性がないか、ご自身とパートナーでよく話し合ってください。(当院ではパートナーの方にも同意書に署名していただく必要があります)
- 原則として不可逆的な手術です。復元手術(精管再吻合)が可能な場合もありますが、成功する保証はなく、自由診療で高額です。年月の経過とともに成功率は下がるとされています。
- お若い方、お子さまがいない方などは、とくに慎重にご検討ください。
- 精子の凍結保存をご希望の場合は、手術前にご相談ください(施設をご案内します)。
- 出血しやすい体質、血をさらさらにする薬の内服、陰嚢の手術歴、皮膚の炎症などがある場合はお申し出ください。
麻酔について
当院では「仙骨硬膜外麻酔」と「局所麻酔」を併用します。
- 仙骨硬膜外麻酔:おしりの中央にある骨(仙骨)のすき間から細い針を進め、麻酔薬を注入します。陰部から下腹部にかけての痛みをやわらげます。
- 局所麻酔:陰嚢の皮膚と、処理する精管のまわりに直接麻酔します。
- 手術中の意識はあります。痛みを感じるときは、その都度、麻酔を追加します。
- 手術中は精管を引っ張ることで下腹部に鈍痛を呈することがあり時として吐き気を呈することがあります。
麻酔に伴うまれな合併症
血圧の低下、頭痛、一時的に尿が出にくい、吐き気、注射部位の痛みや内出血、アレルギー反応、感染 など。
手術の流れ ① 受診から手術当日まで
ご予約・診察:手術の説明、診察、ご質問の確認
同意書:内容をご確認のうえ、ご本人・パートナーが署名します
術前検査:血液検査など
手術日のご予約
手術当日の準備
- 陰嚢まわりの毛の処理(ご自宅、または来院時に行います)
- 食事は軽めに。ふだんの内服薬は事前の指示を確認してください。
- ゆったりした服装で。サポート力のある下着(ぴったりめ)をご持参ください。
- 麻酔の影響があるため、手術後しばらく休憩しておかえりいただきます。手術後ほとんどの方は麻酔の影響による下肢の脱力感から解放され、自力で帰ることができますが、まれに効果が長引くこともあります。その際はご家族の送迎をご利用ください。
手術の流れ ② 当日の手順
- 消毒と麻酔
仙骨硬膜外麻酔と局所麻酔を行います
- 小さく開ける
陰嚢を数mm切開、または小さな穴を開けます(左右)
- 精管を確認
精管を見つけて、やさしく外に引き出します
- 精管を処理
一部を切除し、両端を結紮・焼灼。断端を離して隔てます
- 反対側も同様
もう一方の精管も同じように処理します
- 閉じる
止血を確認し、皮膚を吸収糸またはテープで閉じます
所要時間の目安は60分程度です。終了後は回復室で安静にし、状態を確認したうえで当日ご帰宅いただけます。
精管の処理(拡大図)
精管の一部を切除し、断端を結紮(しばる)・焼灼して閉じます
- 切除に加えて、両端を結紮・焼灼し、断端どうしを離して筋膜で隔てることがあります。
- これらは、切れた精管が再びつながる「再開通」の可能性を下げるための工夫です。
- ただし、再開通の可能性をゼロにすることはできません。
手術直後(当日)
- 手術後は麻酔から回復するまでは30分〜1時間ほど安静にしていただきます。
- お薬:鎮痛薬、必要に応じて抗菌薬を処方します。指示どおりに内服してください。
- 麻酔の影響が残ることがあります。当日は安静にし、運転・危険を伴う作業・重要な判断は避けてください。
- 強い痛み、陰嚢が急に大きく腫れる、出血が止まらない、38度以上の発熱などがあれば、ご連絡ください。
手術後の注意点
安静
手術当日から翌日は、ご自宅で安静にしてください。
入浴
シャワーは翌日から可能です(指示に従ってください)。湯船・温泉・プール・サウナは数日〜1週間程度お控えください。
運動・仕事
はげしい運動、重い物を持つ作業、長時間の自転車・バイクは1週間程度お控えください。デスクワークは数日で再開できることが多いです。
下着
1週間程度は、サポート力のある下着をご使用ください。
性行為・射精
出血や痛みが落ち着くまで(目安として1週間程度)お控えください。再開後もしばらくは避妊効果がないため、避妊を続けてください。
傷
吸収糸は自然に溶けます。抜糸は原則不要です(溶けずに残った糸は必要に応じて処置します)。
受診
術後の診察予約を守ってください。
避妊効果の確認(重要)
- 手術直後は、精液の中にまだ精子が残っています。
- 目安として射精を約20回行い、かつ手術から約2〜3か月が経過したのち、精液検査を受けてください。
- 精液検査で精子がいないことが確認できるまでは、必ずほかの避妊法を併用してください。
- 検査で精子が残っている場合は、期間をあけて再検査します。まれに追加の処置が必要になることがあります。
確認検査で「精子がいない」と判定されるまでは、パイプカットによる避妊はできていないものとお考えください。
合併症・リスク
- 出血・血腫:陰嚢の中に血がたまり、腫れや痛みが出ることがあります。まれに処置が必要です。
- 感染・創部のトラブル:抗菌薬の内服や処置で対応します。
- 痛み:多くは数日〜数週間で軽快します。まれに、長く続く陰嚢の痛み(慢性陰嚢痛)が生じることがあります。
- 精子肉芽腫:精管の断端から精子がもれて、しこりや痛みができることがあります。多くは自然に軽快します。
- 精巣上体のはり・違和感。
- 避妊の失敗(再開通):ごくまれに起こります。
- 麻酔に伴う合併症(前述)。
- ごく一部に、射精や性機能に関する自覚的な変化を訴える方がいます。
- 重い合併症はまれですが、可能性はゼロではありません。気になる症状は早めにご相談ください。
費用
パイプカット(両側)
100,000円(税込)
診察代・術後の投薬を含みます
- 上記に含まれるもの:手術代、手術後の投薬、手術後の診察費用(初診料は3,300円)
- 別途かかる場合があるもの:初診料(3,300円)、初診時の検査、手術後の精液検査 など
- 公的医療保険の対象外の自由診療です。
- お支払い方法や、精子凍結保存など追加の費用については、診察時にご確認ください。
受診の流れ/まとめ
ご予約
診察・説明
同意・術前検査
手術(日帰り)
術後の診察
精液検査で確認
まとめ
- パイプカットは、永続的な避妊を目的とした日帰り手術です。
- 勃起・射精・男性ホルモンへの影響は基本的にありません。
- 手術の直後は避妊効果がなく、精液検査での確認が必要です。
- 原則として元に戻せない手術です。パートナーとよく相談し、十分にご検討ください。
- ご不明な点は、遠慮なく診察時にご質問ください。
本資料は一般的な説明を目的としています。個々の診断・適応・治療方針は診察のうえ決定します。

