活動膀胱に対するボトックス(ボツリヌス毒素)膀胱壁内注入療法
治療をご検討中の患者さまへ
- この資料は、過活動膀胱に対するボトックス(ボツリヌス毒素)膀胱壁内注入療法について、治療の流れ・効果・合併症・保険診療点数などを一般的にご説明するものです。
- 治療の適否や詳しい内容は、診察・検査の結果に基づき担当医からご説明いたします。
- ご不明な点は遠慮なく医師・スタッフにおたずねください。
過活動膀胱とは
- 過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)とは、膀胱の筋肉(排尿筋)が自分の意思と関係なく収縮し、急に強い尿意をもよおしてしまう状態です。
- 40歳以上の方の一定割合にみられるとされ、決して珍しい病気ではないと報告されています。
- 症状により外出や仕事、睡眠など日常生活に支障が出ることがあります。
- 生活習慣の改善や内服治療で症状が軽快する方が多い一方、治療を続けても十分な効果が得られない方もいらっしゃいます。
主な症状
尿意切迫感
急に強い尿意をもよおし、がまんすることが難しい
頻尿
1日に8回以上、繰り返しトイレに行きたくなる
切迫性尿失禁
尿意切迫感とともに、尿が漏れてしまう
夜間頻尿
夜間、排尿のために何度も目が覚める
症状の現れ方には個人差があります。気になる症状がある場合はご相談ください。
治療の選択肢とボトックス治療の位置づけ
- 第一選択の治療:生活指導・膀胱訓練などの行動療法、内服薬(抗コリン薬・β3作動薬)
- ボトックス膀胱注入療法は、行動療法および内服治療を一定期間行っても十分な効果が得られない場合や、副作用のため内服の継続が難しい場合に検討される治療です。
- 2020年(令和2年)に、過活動膀胱・神経因性膀胱に対する治療として公的医療保険の適用が認められました。
効果不十分・副作用で継続困難な場合にステップアップ
行動療法
内服治療
ボトックス膀胱注入療法
ボトックス膀胱注入療法とは
- A型ボツリヌス毒素製剤を、膀胱の筋肉(排尿筋)に直接注入する治療です。
- 排尿筋の過剰な収縮を抑えることで、尿意切迫感・頻尿・切迫性尿失禁などの症状の軽減を目的とします。
- 膀胱鏡(内視鏡)を用いて、尿道から膀胱内を観察しながら行います。
- 根治的な治療ではなく、症状を和らげるための治療です。効果は一定期間で徐々に消失するため、必要に応じて繰り返し行います。
対象となる方・治療を受けられない方
対象となる方
- 過活動膀胱または神経因性膀胱と診断されている方
- 行動療法および内服薬治療(抗コリン薬・β3作動薬 等)を12週間以上行っても、十分な効果が得られない方
- 副作用のため内服治療の継続が困難な方
治療を受けられない方
- 現在、尿路感染症にかかっている方
- 重度の排尿障害があり、自己導尿を行えない、または行うことに同意いただけない方
- 全身性の筋力低下を伴う神経筋疾患がある方
- 妊娠中または授乳中の方
- ボツリヌス毒素製剤に対するアレルギーの既往がある方
治療の流れ
- 問診・検査
尿検査・残尿測定・膀胱鏡検査 など
- ご説明・同意
治療内容とリスクのご説明、同意書の確認
- 治療当日
麻酔のうえ、膀胱鏡下でボトックスを注入
- 経過観察
排尿状態・残尿量などを確認
- 効果判定
- 症状の変化を確認し、必要時に再治療を検討
- 治療前に、これまでの行動療法・内服治療の経過について確認させていただきます。
- 治療当日は、麻酔の方法や自己導尿についてのご説明のうえ、同意書をご確認いただきます。
- 治療後は排尿状態を確認しながら、経過観察・フォローアップを行います。
治療当日の手順
- 麻酔:腰椎麻酔・膀胱内への局所麻酔など、状態に応じて選択します。
- 膀胱鏡を用いて膀胱内を観察しながら、排尿筋に細い針でボツリヌス毒素を注入します。
過活動膀胱の場合:100単位を20か所に分けて注入 - 治療時間の目安:10〜20分程度
- 治療後は、残尿測定など経過観察を行います。
- 入院の要否は、患者さまの状態や治療内容に応じて医師が判断します。
膀胱(模式図)
- ● 注入部位(排尿筋内・約20か所)

尿道(膀胱鏡を挿入)
治療効果(発現時期・持続期間)
- 効果の発現:治療後2〜3日ごろから自覚されることが多く、効果が安定するまでには2週間程度かかる場合があります。
- 持続期間:4〜8か月程度とされています。
- 効果は永続的なものではなく、時間の経過とともに徐々に薄れていきます。
- 効果の程度・持続期間には個人差があります。
治療実施
2〜3日後|効果を自覚
2週間後|効果が安定
4〜8か月|徐々に消失
上記は一般的な目安であり、効果の発現・持続には個人差があります。
再治療について
- 効果が薄れ、症状が再び強くなってきた場合は、再度の注入治療をご検討いただけます。
- 保険診療上、再治療は前回の治療から4か月以上の間隔をあけて行うこととされています。
- 繰り返し治療を行う中で、ごくまれに体内にボツリヌス毒素に対する抗体ができ、効果が得られにくくなることがあります。
- 再治療をご希望の場合も、その都度診察のうえで適応を判断いたします。
主な合併症・副作用
| 症状・合併症 | 発生頻度の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 排尿困難・残尿の増加 | 5〜9%程度 | 尿が出しにくくなることがあり、一時的に自己導尿が必要になる場合があります |
| 尿路感染症(膀胱炎 等) | 5%程度 | 症状に応じて抗菌薬などで対応します |
| 血尿 | 2%程度 | 多くは数日程度で自然に軽快します |
| アレルギー反応 | 1%未満 | 発疹・かゆみ 等 |
| 全身の脱力感・嚥下障害等(重篤な副作用) | ごくまれ | 症状が現れた場合は直ちに医療機関を受診してください |
発生頻度は一般的な報告に基づく目安であり、個人差があります。詳しくは担当医にご確認ください。
特に注意が必要な合併症:排尿困難・自己導尿
- 治療後、一時的に自分で尿を出しにくくなることがあります(5〜9%程度)。
- その場合、一時的に自己導尿(ご自身で細い管(カテーテル)を用いて尿を排出する処置)が必要になることがあります。
- 治療を受ける前に、自己導尿の方法についてご説明し、必要時にご自身で対応いただけるかを確認させていただきます。
- 自己導尿の実施にご同意いただけない場合は、安全のためこの治療を行うことができません。
- 排尿困難の症状は多くの場合一時的ですが、症状が続く場合や強い違和感がある場合はご連絡ください。
保険診療点数・費用の目安
- 本治療は2020年(令和2年)より、過活動膀胱・神経因性膀胱に対する治療として公的医療保険の対象です。
- 手術点数:K823-6「尿失禁手術(ボツリヌス毒素によるもの)」 9,680点
- このほかに、診察料、検査費用(尿検査・膀胱鏡検査 等)、薬剤費などが別途かかります。
| 項目 | 手術料部分の目安(自己負担) |
|---|---|
| 3割負担の方 | 約29,000円 |
| 2割負担の方 | 約19,000円 |
| 1割負担の方 | 約 9,700円 |
- 上記は手術料相当分(9,680点×10円)の自己負担目安です。
- 検査・薬剤・入院費等を含めた総額は別途となります。
- 高額療養費制度をご利用いただける場合があります。
金額は目安です。実際の負担額は検査内容・入院の有無等により異なります。詳しくは窓口にお問い合わせください。
まとめ・受診のご案内
- ボトックス膀胱注入療法は、行動療法・内服治療で効果が不十分な過活動膀胱の症状にお悩みの方への治療の選択肢の一つです。
- 効果や合併症の現れ方には個人差があります。治療の適否は、診察・検査の結果に基づいて判断いたします。
- 自己導尿が必要になる可能性など、治療前にご理解いただきたい点があります。ご不安な点は遠慮なくご相談ください。
- ご質問・ご相談は、担当医または当院スタッフまでお気軽にお問い合わせください。
当院 泌尿器科 外来窓口までお気軽にご相談ください

